テニス選手のスポーツビジョンに関する研究

日本体育学会第51回大会号:372,2000


1.研究の背景と目的
 近年、スポーツビジョン(以下、SV)の重要性を訴える報告が、数多くなされてきている。眼は、人間が情報を入力するための基盤となるもので、どのようなスポーツにおいても重要な能力であることは、当然のことといえよう。
 特にテニスは、ラケットを用いて高速で飛んでくるボールを捉え、正確に相手コートに返球するスポーツである。AOA(米国オプトメトリスト協会)による、『競技種目別の視機能重要度スコア表』では、テニスはSVの9項目中8項目で、最重要の「5」ランクが必要とされている。これは、同表中の全21種目のなかで、最も視機能が重要なスポーツであることを示している。
これまで、他の競技種目においてはSV、視機能というテーマで行われた研究が散見される。
 テニスに関しては、大学テニス部員を対象に測定した、堀内(1997)の研究がある。ここでは、SVの能力と競技水準、プレースタイルとの関連について検討している。両者の間に優位な関連は見られなかったものの、今後被験者を増やし、さらなる検討を行う必要性を説いている。また、具体的なSVのデータを示したことも、一つの成果であるといえよう。
 しかし、これ以外にテニスとSVに関する研究は見受けられない。「視機能が重要な」競技であることからも、早急なデータの蓄積が必要であるといえよう。
 そこで本研究は、大学テニス選手を対象にSV能力を明らかにし、指導の上での示唆を得ることを目的とする。

2.研究方法
 被験者はA大学テニス部員男子11名、女子10名であった。被験者の競技レベルは、男子は地方学生選手権中位レベル、女子は全国大会出場レベルである。
 SVの測定は、スポーツビジョン研究会の示す以下の8項目を行った。

1. 静止視力(SVA)
2. KVA動体視力(KVA)
3. DVA動体視力(DVA)
4. コントラスト感度(CS)
5. 深視力(DP)
6. 眼球運動(OMS)
7. 瞬間視(VRT)
8. 眼と手の協応運動(Acu)

 測定の際は、通常テニスを行うときと同じ状態(裸眼、コンタクト、眼鏡等)で行った。
 また、被験者の特性として、利き手、利き目、テニス競技年数等についても同時に調査した。男子の平均競技年数は6.27年、女子は9.80年であった。

3.結果と考察
 男子選手のSV各項目の平均値と標準偏差、ならびに5段階評定を表1に、女子選手のSV各項目の平均値と標準偏差、ならびに5段階評定を表2に示す。

表1 男子選手のSV各項目の平均値と標準偏差
	SVA	KVA	DVA	CS	DP	OMS	VRT	Acu
M	1.19	0.63	37.85	4.64	8.09	71.45	12.36	89.41
sd	0.30	0.27	0.55	1.57	10.36	3.83	1.91	7.35
5score	3	3	4	2-3	3	2	3	2

表2 女子選手のSV各項目の平均値と標準偏差 SVA KVA DVA CS DP OMS VRT Acu M 1.27 0.85 36.58 5.10 7.40 62.60 12.90 93.65 sd 0.24 0.24 1.82 1.20 2.50 13.60 3.38 5.71 5score 3 3 4 3-4 4 1 3 1

 A大学テニス部員のSV能力は、スポーツビジョン研究会の示した5段階の評価基準によると、男女ともDVAではやや高い評価を、またOMSとAcuでは低い評価を示していることがわかる。
 この評価を、堀内の報告のデータと比較してみると、DVAの評価はほとんど変わらないものの、OMSとAcuについてはA大学の方が低い評価を示していた。競技年数について、堀内の報告では明らかにされていないが、競技レベルは、堀内が対象とした大学部員の方が高いレベルにあった。この点がテニスにおいて特に重要なSV能力といえるのかもしれない。今後さらに多様なレベルの被験者を多数測定することで、明らかにすることができるだろう。

 発表当日は、さらに詳細なデータを示し、テニスにおけるSV能力についての考察を試みる。


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